2011年11月29日

1-1 アメリカで成功するキンドル出身の電子書籍作家たち

 電子書籍の特徴の一つは、書籍を出版するハードルが下がり、電子書籍であれば誰でもが書籍を発行することができるようになったことです。いままでの紙書籍は出版社の眼鏡にかなわないと、出版できませんでした。あるいは紙で自費出版すると無視できない費用が発生し、それに見合うだけ売れるという保証はありませんでした。

  J・K・ローリングのハリー・ポッターシリーズの第一巻『ハリー・ポッターと賢者の石』でも、12の出版社に持ち込まれたものの、すぐには出版できませんでした。そのときは作者はまっくたの無名ですから、相手にされないとは当然だったかもしれません。出版社が『ハリー・ポッターと賢者の石』の出版を断った理由は単で「長過ぎる」というものでした。長い本は売れないという先入観があったのでしょう。これでは出版社の編集者にマーケットを見抜く力がないといわれでも仕方がありません。

 しかし電子書籍では出版社に「鑑定」して貰う必要はありません。コストをかけずに出版することが可能です。多くの読者に直接、書き上げたものを問いかけることができるのです。作品に価値があれば、直接読者に書籍を販売してベストセラーにすることも可能です。

 実際、アメリカでもっとも普及している電子書籍プラットフォームであるアマゾンのキンドルブックスでは、過去に紙の書籍を発行していない無名の作家が一躍ミリオネアになるということが珍しくなくなりました。もっとも有名なのは

アマンダ・ホッキング

という作家です。彼女はアマゾンで電子書籍を発行し、瞬く間に100万部近くを売りました。弱冠26歳でした。アマゾンだけでも200万ドルは稼いだと言われています。彼女がキンドルの自己出版サービスを始めたのは、2010年の4月。1年もたたないうちに販売数は100万冊に及んだのです。

 彼女も最初は書き上げた小説を多くの出版社に持ち込みました。しかし大半が門前払いです。出版社もビジネスですから、売れる本だけを出版したいのが本音です。売れるかどうかわからない本をリスクを背負って出版するより、確実に売れる本を出したいと考えます。出版のプロであるはずの出版社で「これは売れる」と見込んで制作し出版しても、目論みが外れ在庫の山になることも珍しくありません。無名の作家の書籍がどうして売れると言えるのでしょうか。そのため無名の作家の持ち込み原稿は、ほとんどが日の目を見ることはありません。

 アマゾンのキンドルブックスで100万部を売ったアマンダ・ホッキングは、大手の出版社から紙書籍の出版契約を締結しました。電子書籍でベストセラーになった本は紙の本でも売れることが確実だからです。つまり、電子書籍で売れば、紙の書籍も発行できるのです。

 アマンダ・ホッキングは全く無名から一躍スターダムに踊りでました。それとは逆に作家として紙の本を出版しながら、電子書籍での配信で結果を出しているのが、ジョー・コンラスというミステリー作家です。彼は昨年の9月までに電子書籍を10万部以上売りましたが、75%以上はアマゾンのキンドルからのものでした。

彼は従来の出版社から紙の本も発行しています。日本でも文春文庫でミステリー小説が発行されていますが、電子書籍を手がけてからは、販売比率は圧倒的に電子書籍となっています。電子書籍を10万部以上売ったとき、販売した書籍のうちで紙も電子も含めてカウントすると紙の書籍の比率は21%程度になっています。彼の場合、確実に電子書籍の方が売れるのです。

 コンラスによると、

2・99ドルの電子書籍1冊で25ドルのハードカバー1冊と同等な利益

だそうです。売れる作品を持っていれば、出版社を経由するより、自分で電子書籍を作成して出版する方が利益は大きくなります。販売価格をうんと下げると、より多くの読者に買ってもらえることになります。わずかのマージンで高い紙の書籍を売るより、作家にとってはメリットがあります。

 また電子書籍のメリットには、出版社に断られた作品でも電子書籍化すれば簡単に販売できることがあります。実際ジョー・コンラスの電子書籍売上げの大半は、出版社に発行を断られた作品です。今まであれば出版社が「NO」と言えば、書籍にすることはできませんでした。自費出版しても販路は限られ、多くの部数を販売するとこは無理でした。しかし電子書籍では売り物にならなかったものでも売り物にすることができるだけでなく、巨大なマーケットが個人にも用意されているのです。


◆シンデレラ作家の成功の秘密 ー米国で100万部売ったアマチュア作家
http://www.sciencereadings.com/3787/


◆アマンダ・ホッキング:e-bookの自費出版で大金を稼ぐ
http://webfiction.jp/?p=64


◆もう出版社なんかいらない?
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2010/09/post-1637.php


◆電子書籍市場におけるAppleの存在感はまだまだ
http://doubleko.blog18.fc2.com/blog-entry-5514.html

 


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