2011年2月から始まったブックアプリリジェクトは日本にも影響した。それまで開発者が複数のアプリを申請してもたいていは審査に通っていたが、それ以降はある程度の申請数でリジェクトされるようになった。リジェクト理由は2.20のDevelopers "spamming"であった。日本ではiBookstoreは開始されていなかったので、2.21リジェクトではリジェクトできなかったのである。(iBookstoreがローンチしていない)日本では2.21が適用できないための暫定的な措置であることは明らかだった。
このとき多くの出版社はiOS Developer Programに開発者登録しても、自社書籍をアプリとして電子書籍ラインナップを揃えることができないことがわかり、App Storeから撤退していった。とはいえ、その当時の日本の電子書籍で確実に売れるのはApp Storeだけだった。App Storeでブックアプリを出し続ける方法はただ一つ。開発者登録を複数用意する方法だった。
一アカウントで最大で十くらいのアプリは審査が通る。もちろんうまくいけばの話で、多少の工夫は必要だ。App Storeに並んだアプリがそこそこ売れれば十アプリでiOS Developer Program登録しても採算は全く問題がない。Appleの開発者登録は初期のころは登記簿や住民票が必要なくらい審査が厳しく、架空のダミー企業では登録できなかった。そこで出版社は海外でペーパーカンパニーを立ち上げて開発者登録するようになったという。また法人と個人は別々に登録できるので、個人名を借りて登録することも増えていった。
2.20リジェクト回避は方法があったが、2.21リジェクトには方法があるのだろうか。回避方法はアメリカのブックカテゴリーで2011年以降に審査が通ったアプリを調べてみればいい。以前アメリカのApp Storeのランキングを表示するサイトを見てみればよい。たとえば
◆AppData
http://www.appdata.com/leaderboard/not_available
というサイトがある。タイトル下の[iOS Apps]を選択し、左カラムにある「Leaderboards」の「Gainers Today」をクリックする。[Show:]のポップアップメニューから「Top Paid Apps Books Genre」を選択して[Find]すると、以前はランキング表示された。残念ながら現在はログインしなければ表示できない(カテゴリー別ランキングは有料のようだ。現在はゲスト閲覧は不可)。
以前閲覧したときのトップは「Manga Collection MF」というアプリで、どうやら日本の漫画をアプリ内配信しているアプリ。2010年11月の申請で、iBookstoreローンチ以後に申請を通している。In App Purchasesは使っていないので、サーバから新しいコンテンツを定期的に配信しているようだ。最初に買ったら後はタダというアプリである。
それ以下のアプリはディズニーのアニメをアプリ化したようなものが大半だ。動く絵本というような感じのアプリが並んでいる。iPadが登場したときに、アップルが見せた「不思議の国のアリス」のインタラクティブ絵本のようなものだ。たまにテキストペースのアプリもあるが、申請日を見ると2010年だったりするので、2.21リジェクト以前に申請を通したと予想される。
それ以外で審査に通っているのは、ほとんどがビューワーアプリだ。ビューワーアプリは基本的に無料で配信されていて、In App Purchasesが「Yes」になっているものは有料アプリでもビューワーアプリであると考えられる。無料アプリは[Show:]のポップアップメニューで「Top Free Apps Books Genre」を選択すると、In App Purchases(アプリ内課金)を使用したビューワーアプリが数多く並んでいた。ビューワーアプリは、iBookstoreローンチ以降も申請されたものがたくさんあった。
つまりプックカテゴリーでは、動画やアニメを多用したインタラクティブなアプリにするか、サーバで配信するアプリやアプリ内課金を使うアプリはiBookstoreローンチ以降も審査が通っている。アメリカで通っていれば日本でもリジェクトされることはないだろう。ここに2.21リジェクト対策の答えがある。
なお下記のページでは現在でもブックカテゴリーのランキングを表示できる。サイトを開いてChoose Categoryで「Books」を選択する。ただしiTunesプレビューなどにリンクがなく、タイトルで検索してiTunesプレビューなどでアプリの詳細を調べるしかない。
◆Applyze
http://www.applyzer.com/main.php
さてそれではApp Storeに申請するブックは「単純な本」でなければ本当に審査をパスするのだろうか。もしiBookstoreにはない機能を搭載したアプリであれば審査に通るということであれば、アメリカのブックカテゴリーにはもっとさまざまな機能を追加した単体アプリがランキングされていてもおかしくはない。
2.21リジェクト当初は、実はiBookstoreにはない機能があれば審査に通るのではないかと考えていたが、実際には多少機能を追加してもすべて2.21で撥ねられた。これはiTunesを開いてiTunestoreのブックカテゴリーで「新作」を一覧するとわかるが、新作の単体アプリがほとんど増えなくなっていることでわかる。3.05ショック以降の日付のものでも、実際には審査はそれ以前で公開日が3月5日以降になっているだけである。ブックであってもテキスト主体と思われるものはすべてリジェクトされている。
またアプリ内課金で複数のコンテンツを扱う方法では単体アプリではないことになり、2.21でのリジェクトの対象にはならないばすだ。SakuttoBookには組み込み型アプリ内課金の機能があるので、それも試してみた。が、同じようにリジェクトされた。
つまりiBookにない機能があっても単体アプリはアニメや動画や音声を主体にしたものでなければ審査が通らず、組み込み型のマルチコンテンツでもリジェクトされてしまうということになった。やはりアメリカと同じ基準で審査が行われていることはほぼ間違いなさそうだ。
アメリカのブックカテゴリーにランキングされているアプリの大半はストアアプリであった。そうするとストアアプリであれば審査に通る可能性は極めて高くなる。コンテンツを組み込み型ではなくサーバダウンロード型にすればほぼ問題ない。
◆JIPPO BOOKS(十方ブックス)
https://itunes.apple.com/jp/app/jippo-books-shi-fangbukkusu/id631021450?&mt=8

も完全にサーバダウンロード型であった。サーバからコンテンツをダウンロードするタイプにすれば審査に通るのであれば、いままでの単体アプリも工夫次第でいままでと同じようにしアプリを申請することができる。ストアプリにして、本コンテンツ以外にコンテンツを用意すればいいのである。
アプリのコンテンツは青空文庫のコンテンツでもかまわないのである。「JIPPO BOOKS(十方ブックス)」は青空文庫にある『宮本武蔵(吉川英治著)』をそのまま使っているので、公開されたコンテンツを使うことに制限は全くないのである。
ただしサーバダウンロード型にすれば、ブックアプリは審査に通るのかというと、必ずしもそうではない。実は審査にはそれ以外にも条件があったのだ。
>>続く
◆JIPPO BOOKS(十方ブックス)
https://itunes.apple.com/jp/app/jippo-books-shi-fangbukkusu/id631021450?&mt=8
◆SakuttoBook(サクッとブック)でiPhoneアプリを作る方法
http://bit.ly/mhgjCG
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