この数ヶ月Kindleに取り組んでみて感じたのは、Kindleでは数が決め手ではないかということだった。数というのは配信数ではなく、申請したタイトル数である。タイトルを増やしていくことで、配信数も増やしていくことが可能になる。一冊や二冊出しても固定収入にはならない。それではなかなか続かないというのが本当のところではないか。
アマゾンの強みはロングテールにあると言われる。本当かどうかは具体的な数字がわからないので何とも言えない。たくさん売れなくてもコンスタンスに売れるものがあれば、あとはそういうものを増やしていけばいい。ネット販売の強みは、在庫リスクがほとんど存在しないということだろう。
減りつつある書店の収益を支えていたものは、ベストセラーや雑誌ではなく、カテゴリー毎にある定番の書籍であったと言われる。とはいえ今ではそういう定番の書籍もコンペチターが多くなり、泰然たる地位に居続けことは難しい。紙の書籍では競争相手は多いがKindleではまだまだ定番化された書籍は少ないのではないかと思う。
書店の場合はカテゴライズされた「棚」にあることが定番の証だが、電子書籍では検索結果がそれにあたるのではないか。つまり検索の多い単語の検索結果で表示されることである。そこで最初に表示されれば、その電子書籍はカテゴリー内の定番であると言える。
書店の棚は物理的な限界がある。売れ筋のカテゴリーでは棚の幅は大きくなるが、そうでなければそこに収められる書籍の数は自ずと決まってしまう。並ぶか並ばないかで売れるかどうか決まり、より売れるには目立たせる必要がある。そうなると背表紙が重要になり、タイトルが決め手になる。
しかしアマゾンでは何冊でも電子書籍を並べることができるから、まずはそこで上位に来るしかない。上位に並べるには「新着」であるか、ダウンロード数が多いということになるので、結果的には売れている本だけがさらに売れていくということなる。そうすると特定のカテゴリーや検索結果で上位に表示される書籍を配信していけば、電子書籍の定番化は可能ということになる。
日本のKDPでは無料キャンペーンしかできないので、上位に表示させるにはそれしか方法はない。無料キャンペーンをすると注目度が上がるので、キャンペーン後販売数は確実に増加する。さらに同じカテゴリーでリストさせる書籍の数を増やしていく。表紙のデザインを統一しておけば、いやでも目立つだろう。
同じカテゴリーで書籍を増やすのは大変そうだが、実はそうではない。というのは、一冊の本を何冊かに分冊すればいいのである。紙の本では本のボリュームは、書籍の仕様や折丁、文字数が印刷代に反映されるので、文字数にはいろいろ制限があるが、電子書籍ではそういうものは一切ない。従って中身を増やしていき、本を分けていくのである。そうすると一つのテーマで何冊ものタイトルを申請できる。分冊するほどボリュームがないときは、同じテーマで続編や番外編を書けばいい。
例えば原稿用紙で三百枚の本があるとしよう。そのまま電子書籍化してKindleに一冊のタイトルとして並べるより、六十枚程度に分割した構成にして五タイトルにした方がトータルでは売れるということである。書籍を分割してタイトルを増やすと、KDPセレクトで順繰りに無料キャンペーンを行うである。KDPセレクトでは90日間に5日間無料キャンペーンができるので、2日程度にして順繰りに行えば毎週いずれかのタイトルで無料キャンペーンを実施できる。
無料キャンペーンはKDPセレクトに登録している限り可能だから、継続してキャンペーンを続けることができる。キャンペーンをしている限り、定期的に有料のコンテンツも配信されていく。シリーズのうち一冊や二冊を無料でダウンロードできてもすべてを無料でダウンロードするのは難しい。関心があれば、他のタイトルは有料でも購入する可能性は低くない。分冊した本のうち何冊かは無料キャンペーンをしないようすれば、確実に有料で売れるようになるのではないか。
また分冊して冊数を増やすと、検索結果のリストを占有できるので確実に目立つ。検索結果は検索数の多いキーワードの方がいいにしても、ある程度書籍の需要があれば、検索数は必ずしも多くなくてもよい。重要なことは、できるだけタイトルを増やすということではないか。
過去に書籍にしたものでもそのままガンガン申請すればよい。Kindleの電子書籍は作成のハードルは低いが、それでも誰にでもできるわけではない。その場合は、リフローでなくてもとりあえずPDFがあれば固定レイアウトのまま申請して販売してみればいいのである。つまりWordて作成してPDFにすれば、簡単に固定レイアウトのKindleブックは作成できる。Kindleストアに並べて反応が大きければ、もう一度書き直して別の書籍としてタイトルをアップすることもできる。
ロングテールで固定的に収益を得るには、やはりたくさんのタイトルを持つ必要がある。たくさんの本を書くというより、一つのテーマを分割してタイトルを増やしていくことを考えるべきだろろう。アマゾンは取り扱い品目を増やしていくとこでビジネスを成り立たせている。電子書籍の申請する側も同じように、タイトルを増やしていき、定期的に無料キャンペーンを行っていけば定番化、つまり固定収入になっていくに違いない。
Kindleで扱うタイトルはまだまだ少ない。電子書籍で勝ち抜くには、いままでの書籍の固定観念を打ち破りKindleならでは配信方法を見つけていくしかない。自分で書かなくても、出版社としてKindleに申請する場合も同じである。Kindleでダウンロードを増やすには、Kindleの配信方法に合わせた電子書籍の展開が必要になるだろう。
というわけで現在昔に書いた「印刷営業、明日はどっちだ」で実験している。複数タイトルで無料キャンペーンを組み合わせて、固定収入になるかどうか続けてみたい。
◆印刷営業、明日はどっちだ 1: 弱者が不労所得で儲ける営業方法とは [Kindle版]
◆印刷営業、明日はどっちだ 2: 印刷ノウハウで収益をマルチ化する方法 [Kindle版]
◆印刷営業、明日はどっちだ 3: 印刷技術を四方八方に躊躇なく展開せよ [Kindle版]
◆印刷営業、明日はどっちだ 4: 訪問営業以外の集客ノウハウを確立せよ [Kindle版]
◆印刷営業、明日はどっちだ 5: 序破急で営業を劇場化して切り込め [Kindle版]
◆印刷営業、明日はどっちだ 6 印刷ビジネス閻魔帳: 印刷会社がするローカルエリア営業とは [Kindle版]