Illustratorの印刷用データ作成と保存をテーマに『これだけでできるIllustrator CS〜CS4入稿データ作成講座』を発行した。まだまだCS4を使用しているユーザーは多いと思うが、Creative SuiteからCreative Cloudへの移行が進む中、当面はCS6が中心になるのではないかと思われる。『これだけでできるIllustrator CS〜CS4入稿データ作成講座』をCS6に合わせて作成し直して、Kindleブックとして発行することにした。
Kindleブックは、何冊に分けることにした。ボリュームのある本を作成するのは結構大変で、不具合があるとミステイクポイントを探すのがけっこう大変なのと、Sigilで編集するとき、ボリュームが多いと動作が鈍くなる。たとえば吉川英治版『三国志』とかは、ファイルを開くだけで一分はかかりそうだ。サクッと開かないのである。
作成が大変なのと同時に、Kindleでの販売でもネックがある。それはKDPセレクトにすると、販売価格に上限があるという問題である。70%のマージンを貰うには、定価の上限が1250円と決まっているだ。要するに高く売りたいときは35%を選択するしかない。そんな高い価格を付けると買っていただけるユーザーは限られてしまう。分冊してそれぞれをリーズナブルな価格にするしかない。
最初に『これだけでできるIllustrator CS〜CS4入稿データ作成講座』をCS6で再検証してそのまま固定レイアウトにしようかと思った。実際作成しかけた。PDFから固定レイアウトを作成するは簡単なので、それもありかなと思ったが、今回はリフローで作成することにした。デバイスの画面サイズが多岐にわたる以上、本文テキストはリフローの方が読みやすいからである。
ややこしいのは図版をどうするのか、ということである。図版にいくつもスクリーンショットを並べて解説してあるものが少なくない。図版を分解してキャプションを付け直す方法もあるが、ほぼそのままもう一度InDesign上でスクリーンショットを取り直しそのショットを取り込むことにした。スクリーンショットはCS6に合わせて再撮になるので、作成し直したのである。
本文の中に図版をリフローして放り込んでいたが、この方法だと、例えば一行だけ図版の下や上にテキストが挿入されることがある。そうなると見た目が中途半端なので、図版はそのまま一ページで表示することにした。正確には図版のタイトル、図版、キャプションを罫線で囲って一ページに収めるのである。
タイトルテキストと画像、キャプションを罫線で囲む必要がある。罫線はスタイルシートで「border」を使い、角丸にするには「border-radius」で角丸のピクセル数を指定する。今回は「border」に「groove」で効果をつけて、オレンジ色にした。「border-radius」では「20px」を指定している。
スタイルシートは段落に対して適用すると、その段落全体を囲むようになる。そのために、タイトルと画像、キャプションを一つの段落にする必要がある。方法は簡単で、タイトルと画像、画像とキャプションをInDesign上でソフトリターンで改行するだけだ。InDesign上はタイトルテキストが両端揃えになってしまうが、epub内ではbrタグで改行されているのでそのまま改行されて表示される。あとは「border」段落の前後に改ページを指定しておけばよい。
*タイトルと画像、キャプションを一つに段落して「border」して表示したもの。キャプションは文字スタイルでウエイトを指定してある。画像をタップすると拡大してオリジナルの画像が表示される。
今回はもともとあった第一章を4つに分割した。それぞれを章題にしたが、章題は画像を使うことした。といっても、InDesignで目次を自動生成させるには、目次はテキストとして入力しておく必要がある。そこでテキストの目次を入力したあとに、目次の画像を貼り込んでSigilで編集することにした。タイトルの数だけxhtmlに手を入れることになるが、目次はncxもxhtmlも触る必要がない。
テキストのあとに扉画像を挿入するとこんな感じで書き出される。
<p class="h1" id="toc_marker-2">第一章 ドキュメントの作成とトリムマークとトンボ</p>
<p class="image"><span><img alt="Illustrator_title1-1.jpg" class="frame-1" src="../Images/Illustrator_title1-1_fmt.png"/></span></p>
*InDesignのレイアウト。目次テキストは「h1」で指定し、その後に画像を取り込んでいる。上記はそのレイアウトのままepubを書き出したもの。
第一章のタイトルが「第一章 ドキュメントの作成とトリムマークとトンボ」で章題の画像ファイルが「Illustrator_title1-1.jpg」である。このままだとテキストのあとに画像が表示されてしまう。それでテキストの段落を削除するのだ。しかしそのまま削除するとKindle Previewerでエラーになってしまうのだ。目次が作成できないからである。
問題はタイトルテキスト内にある
id="toc_marker-2"
という要素が目次からのリンク指定になっているためである。ncxもxhtmlもリンク先に「ファイル名#toc_marker-2」で指定するからである。toc.xhtmlには
<a href="../Text/Illustrator_data1.xhtml#toc_marker-2">第一章 ドキュメントの作成とトリムマークとトンボ</a>
とあるからだ。
ncxとxhtmlで「#toc_marker-2」を削除すればリンク先がxhtmlファイル名になるのでエラーにならずにmobiファイルを作成できるが、ncxとxhtmlの両方を触らないといけないので面倒である。一番簡単な方法は「id="toc_marker-2"」をimgタグ内にペーストするのである。それで目次からのリンク先に画像が指定されるので、目次から開くと画像ページが表示されるのである。つまり
<p class="image"><span><img alt="Illustrator_title1-1.jpg" class="frame-1" src="../Images/Illustrator_title1-1_fmt.png" id="toc_marker-2" /></span></p>
と書き換えるのである。
*章題の扉画像。
*テキストページ。いずれもKindle PreviewerでKindle Fireでの表示。
今回は「Illustrator CS6で入稿用データを作成する方法・第一部ドキュメント作成編」として印刷用ドキュメント作成のポイントをまとめた。
第一章 ドキュメントの作成とトリムマークとトンボ
1-1 印刷用ドキュメント作成時の注意点とポイント
印刷用ドキュメント作成の押さえどころとは
1-2 新規ドキュメントを作成するときは「プリント」を選択する
ファイルメニューから新規ドキュメントを作成し「プリント」を選択
1-3 EPS保存、Illustrator形式での用紙設定とトリムマーク
仕上がりサイズの矩形ボックスにトリムマークを作成する
トリムマークの外にオブジェクトを配置しない
1-4 PDF保存するときのトリムマークとトンボの違い
アートボードサイズでレイアウトしてトンボを追加して書き出す
第二章 Illustrator CS6のカラーマネージメント
2-1 「プリプレス用-日本2」をカラー設定で指定する理由
編集メニューの[カラー設定]で「プリプレス用-日本2」を指定する
貼り込みファイルのカラーを指定する[カラーマネージメントポリシー]の[RGB]
オフセット輪転機では「Japan web Coated (Ad)」を指定する
2-2 CMYKやグレースケールでは特色は指定しない
CMYK変換時にトラブルを招きやすい特色の指定
[特色オプション]でLab値を基準に特色を表示する
特色で指定したオブジェクトをCMYKに変換する
第三章 Illustrator CS6で使用するフォントの扱い
3-1 フォントはアウトライン化して入稿するのが安全
すべてのテキストを選択して書式メニューから[アウトラインを作成]を選択
3-2 アウトライン化すると何故フォントは太るのか
すべてをアウトライン化すれば問題は起こらない
3-3 同じフォントフォーマットのフォントを使おう
フォントを変更すると再現できない字形がある
第四章 印刷出力するためのオブジェクトの設定
4-1 ドキュメントの透明効果の分割・統合を印刷用に設定する
[ドキュメント設定]の[透明 - プリセット]をカスタマイズ
[透明の分割・統合プリセット]を作成する
4-2 ドキュメントのラスタライズ効果設定を印刷用にする
効果メニューで[ドキュメントのラスタライズ効果設定]を指定する
4-3 原則的には設定不要な墨ベタのオーバープリント
ノックアウト部分の白場を表示させないためのオーバープリント
Illustratorでオーバープリントする2つの方法
4-4 設定してはいけない白オブジェクトのオーバープリント
印刷されない白のオーバープリント
4-5 印刷で再現できないヘアラインは指定しない
線設定は「0.1ポイント」以上を指定する
塗り設定だけの線は出力できても印刷されない
Illustratorで印刷用ドキュメントを作成するときに知っておいて決して損はないポイントを整理した。スマートフォンやタプレットに入れて是非お役に立ててほしい。第二章以降は順次リリースしていく予定である。
◆Illustrator CS6で入稿用データを作成する方法・第一部ドキュメント作成編